放浪記その2

新年の挨拶を込めて家族に電話したところ、皆が口々に滑りに行っていたのかと聞く。何事かと思えば、冬休みに入って、行き先を告げぬままにブログの更新が途絶えたため、これは怪しいと睨んでいたらしい。さすが我が血の繋がった家族と言うべきか、信用されたものだと言うべきか。大丈夫、まだ滑ってませんよ。


で、私が南で世俗の穢れを落と(さんと)しているうちに、ケニアやナイジェリアの治安が悪化していた。ケニアでは、年末に行われた大統領選挙の結果に対する不正疑惑が暴動と化し、ナイジェリアでは反政府武装勢力の襲撃などの政情不安が世界的な石油価格の高騰の引き金となっている。昔だったらああそう、ですんだ話かもしれないが、今は違う。ケニアとナイジェリアは、サハラ以南のアフリカの中で、比較的安定して成長してきた優等生だ。その2国でさえ、という思いとともに、その波及効果が恐ろしい。ケニアには1月早々に別のEPD WSチームが行く予定だった。大統領選挙による混乱が最大のリスクと友人が言っていたのはその通りとなってしまったが、各国が渡航延期勧告をする中、彼らはどうなってしまうのだろう。また、物資のほとんどをケニア経由で輸入しているウガンダはそのあおりを受けており、なんと燃料の枯渇から、国内航空便の運行が全便キャンセルとなったそうだ。ガソリンも軒並み不足・高騰しているらしい。ウガンダで中古車の輸入販売をしている友人は、商売にならないのではないだろうか。そもそも、車をモンバサから運べているのだろうか。正月休みも返上して忙しく働いていたというのに。ナイジェリアでも友人が働いている。心配と同時に、とてもやるせない思いになる。どうか一刻も早く沈静化しますよう。


放浪記の続きはNew Mexico州にあるWhite Sands国定公園。赤茶けた荒野の真ん中に突如現れる真っ白い砂漠です。

雪山のようにも見えるけど砂

静寂の世界


晦日の夕日

染まる大地

名残り空


浮世離れした風景の中で、なんというか本当に癒された旅でした。自然の中で、萎縮した心がほぐれるような、涙の出そうな瞬間が好きで田舎に行くのですが、日本の風景は、そこで暮らす人々の悲哀のようなものを感じさせるのに対し、アメリカの景色はまた全然違って、更に人間生活から離れた、大地の鼓動に触れる、というのに近い気がしました。日本の風景はやっぱり大好きなんですけど。大自然に抱かれて涙の出そうな瞬間を味わいながら、ああ、こういうものを守るために生きてる、という以上に、ああ、こういう時間のために生きてる、と感じたのでした。