ノーベル平和賞

米国元副大統領アル・ゴア氏と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ノーベル平和賞を受賞しましたね。アル・ゴア氏が受賞したことについて、気候変動の分野で極めて多くの方が培ってきた業績を鑑みるに、私が正直複雑な心境なのですが、IPCCの受賞については、素直に心から賛辞を送りたいと思います。


IPCCや、オゾン層保護分野の科学評価パネル(SAP)環境影響評価パネル(EEAP)などは、科学者が地球規模での意志決定にいかに大きな影響力を及ぼし得るかを示した例として、一度は研究の分野も考えた人間としては、非常に感慨深く感じます。もちろん、内部から見れば、純粋に中立的な科学などというものはあり得なくて、そこには様々な駆け引きと人間くさいドラマがあるわけですが、むしろ、だからこそ、彼らが、大きな使命感の下でほとんど無償で仕事を行い、その結果に政策決定者は敬意を表するのだと思います。


IPCCの受賞の知らせを聞いて、私は今は亡き国環研の森田恒幸教授のことを思い出しました。森田先生は、IPCC第三次作業部会の統括主執筆者でしたが、常人には真似できない働きぶりにムリがたたったのか、53歳の若さで急逝され、日本のみならず世界の大きな損失として、IPCCの会議の場でも一分間の黙祷で全員が弔意を示したと聞いています。私は、森田先生に教えを請う機会には恵まれませんでしたが、日本での修士2年の当時、大学院を卒業したらそのまま留学しようと考え、アドバイスを求めて彼のもとを訪れた私に、「あなたのやりたいことは環境省じゃないと出来ないよ!まず環境省で働きなさい!」という強引な、しかし妙な説得力を持った強い言葉に導かれて、騙されるように(笑)環境省に入ったのでした。


ノーベル平和賞受賞という栄誉を、森田先生がこの世で聞くことができたら良かったのにと思います。IPCCにおいて、多くの科学者がこれまで培ってきた多大な努力への敬意とともに、森田先生の御冥福を祈って。