スターンレビュー&水ネタ

今回は初心に帰って、久しぶりに勉強ネタ。いや、勉強と言えるほどの内容になるかは疑問だけど。


昨日は、気候変動と経済に関するスターン・レビューで有名なニコラス・スターン博士の講演がうちの大学でありました。ノーベル経済学賞受賞者のジョー・スティグリッツ教授とジェフェリー・サックス教授との掛け合いつき。


こういうのがあると、一応アイビー・リーグで、交通の便の良いNYにある大学に感謝せずにはいられません。こんな講演がごろごろしてるのは、素敵だよねぇ。こないだはアル・ゴア氏の講演聞けたし...って書いたっけ?


講演は、明快かつ具体的で満足度高かったです。頭の良い人の喋り方だなぁという感じ(なんじゃそりゃ)。要点は以下のとおり。

  • 気候変動の最悪の影響を防ぐため、温室効果ガスの排出削減にかかるコストは世界全体のGDPの約1%に相当
  • 一方、対策を取らないことによるコスト及びリスクは世界のGDPの年5%以上
  • 温室効果ガスの大気中濃度は450-550ppm CO2eqに抑えられるべき(それ以下は現実的に不可能、それ以上だと被害が甚大)
  • そのための対策は、早く取れば取るほど削減量が少なくてすみ、コストが安くなる
  • 国際的協調のためには、先進国が2050年までに60-80%の削減にコミットすることが重要

明快で強いメッセージ性がありますね。もちろん、コストの算出の仕方とか、discount rateの考え方とかいろいろ議論はあるのでしょうけど、政治の世界においては、(例えその根拠が怪しくても)一人歩きするだけの訴えかける力を持ったメッセージを発せられるかどうかが重要なのが現実と思うので。


で、スティグリッツ教授とサックス教授が口を揃えて、アメリカは、次の選挙で大統領が変わり、気候変動政策にコミットするって言ってました。まあ、そうなんでしょうね。中国も、2013年以降の実効的な枠組の構築に関する過程に積極的に参加するという決意を日本とともに表明したそうで。そんな社会が動くトキにその地にいられるっていうのは貴重なことなのでしょう。


個人的に印象深かったのは、スターン氏が、気候変動の影響の大部分は水を介して生じると強調していたこと。海面上昇、旱魃・洪水といった水循環の変化、氷河融解などなど...。また、森林破壊の食い止めも費用効果の高い対策だと。私は吸収源には基本的に懐疑的なのですが、今の急速な森林破壊によるCO2放出を食い止める、つまりマイナスをゼロに近づける(プラスじゃない)、という意味では確かに意味があるのかと。


さらに、先進国と途上国の差異ある責任の考え方や、途上国の枠組参加のために先進国は何をすべきかという問いに対しても、現実的でよく考えられた答えをしていました。スティグリッツ教授も結構良いコメントをしていて、その点、サックス教授との考えの深度の違いが明確になったというか。


で、今日は「21世紀の水危機への挑戦」という別の公開セミナーに行ってきました。いま、「途上国の水資源」という授業を取っていて、その授業でも思うのですが、水のトピックって、個人的にすごく好きなんだなぁと実感しています。特に淡水。結局、自然を守りたいといったときに想定する自然には、必ず水(特に川)があるんですよねぇ。自分にとってのノスタルジーなんでしょう。


今日のセミナーでは、好きな教授が話していたこともあって、水問題の理解がだいぶ整理されたような気がします。ただ、私の問題は、ある程度大規模・抽象的な話を捉えるのは得意だけど、具体的な個別の問題を突き詰めていって解決するというプロセスを踏んだ経験が乏しいこと、と思う。学問や役所のようなところだと大所の議論になるのはある程度仕方ないのだけど、その経験しかないというのは危険だと思う。


バイオ燃料が水資源を食うという話もあって興味深かったけど、どんどん発散してまとまりないのでこの辺で。