日銀の役割(2)

改めて、日銀のお話


ケインズ経済学における金融・財政政策の意義ですが、ケインズさんと古典派の人々ではお金に対する見方が違います。


古典派の人々は、日銀がお金の流通量を増やしたり減らしたりしたところで、物価こそ変われど、国内総生産(GDP)とか、消費量とか、失業率とか、そういった実際の物の流れには影響しないという考えです。
つまり、市場に何らかの変化が起きると物価が急速にそれを吸収すべく調整されるので、そのほかの変数には効いてこないと。


しかし、ケインズさんはこう考えます。

  1. 商品の値段だってお給料だって、そんなにしょっちゅう変わらないよね。変更するのにコストもかかるしさ(sticky prices/wage)。
  2. そもそも値段を調整しようと思ったら、市場全体の物価の変化を正確に知らないといけないけど、そんなのなかなかわかんないよね(misperception theory)。
  3. 確かに長い目で見れば物価が変化して影響を吸収してくれるけど、短期的にはそれはムリ。だから、他の変数にも影響が出ちゃうのさ(short-run fluctuation)。

(※正確には、2は古典派の理論です。分かりやすいので書いてみましたが、紛らわしくてごめんなさい)


そして、物価が調整するまでの過程で、GDPが落ち込んで不景気になったり、失業率が増えたりと悪影響があるので、そこに日銀や政府の出番があるというわけです。
例えば、GDPが落ち込んで景気低迷が続いているときに、景気を回復させたいと思ったら、こんな手法が考えられます。


日銀がお金の市中流通量を増やす(国債の買取など)
⇒人々が増えた手持ちのお金で預金したり、株や債券などを購入する
⇒お金の貸し手が多くなるので利子率が下がる
⇒借り手はローン返済の負担が軽くなって借りやすくなるので、資本投資に回すお金が増える
⇒生産量が増えて、GDPが回復する


ほー。。市中流通量の調整という言葉の裏には、こんな思惑があったんですね。
市場は大いなる実験場。


しかし、ご存知のように政策が実際に執行されるまでには時間がかかりますし、日銀が増やしたお金の流通がGDPに影響をもたらすまでもタイムラグがあるので、下手したら、とき既に遅し、逆効果(振幅を拡大してしまう)になりません。だから、金融政策の発動は必要最低限にしてね、というのが、異論・各論はあれど、経済学者の全体的な風潮だとか。


本来自律的・自己回復的な系に対して、撹乱がもたらす振幅の振れ幅を小さくして悪影響を抑え、遷移をスムーズにする、というのは、生態系に対する人為介入の発想にも共通するものがあるのかなあと思いました。
ほっとけば徐々に効率的な形に変化していくので、あんまり余計なことしてかき乱さんでくれと(少なくとも私はそう思う)。


とまあ、実際はともかく、日銀さんがやろうとしていることのlogicをようやく少し垣間見た気がします。
まだ習いたての知識なんで、説明が間違ってたらご指摘ください。


最後に、知り合いの方のブログで最近おもしろいものがあったのでご紹介。
After Retirement Planと題して老後の計画を綴ったものです。


この方は外資の入った通信会社で通訳→人事をされていて、近く外資系金融に移られるんですが、曰く、キャリアカウンセリングで言うべきことは5つ。

ふざけるな、甘えるな、耐えろ、勉強しろ、自分で考えろ

だそうです。ご、ごもっとも。。